スポーツメンタリングご案内

★スポーツに”手が届かない”子どもたち

 

「6人にひとりの子どもが貧困状態」「5日にひとり、子どもが虐待で亡くなっている」などという悲しいニュースが立て続けに流れる今の日本には、スポーツに”手が届かない”子どもたちが少なからずいます。

「スポーツのチカラで子どもたちに夢を」という呼びかけも届かず、スポーツ教室を開催しても、その子たちは会場にたどり着くことはできません。

 

その”手が届かない”理由は、費用面だけでなく、身体や心の病気、家庭の事情など、さまざまですが、Sport For Smile は、そのような子どもたちにスポーツの機会を提供するため、韓国で始まったドリームバス・スポーツメンタリングの日本パートナーとして、2014年から「スポーツメンタリング」を実施し、1年目は母子家庭、2年目以降はDV(家庭内暴力)被害者の家庭を支援してきました(小学生メンティーは、支援分野の専門NGOに委託し参加者を決定)。

スポーツメンタリングの日が待ち遠しかった

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★DV(家庭内暴力)と被害者の現状

DVというと他人事のように聞こえる人も少なくないかもしれませんが、昨今被害者数は急増し、既婚女性の3人にひとりがDV被害経験者であり、若年層では女性の2人にひとり、男性の3人にひとりが経験しているというデータもあります。

 

DV家庭の子どもは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に陥るだけでなく、別居を余儀なくされるタイミングで、学校に行かなくなる子も少なくないようです。なかには、母親が精神的に不安定になり家事もできないため、小学生の女の子が家事や小さな弟や妹の面倒をみなくてはならず、そのために学校に行けなくなるケースもあるようです。また、同居している場合でも、家では常に緊張状態にあり、安心して過ごすことはできません。(状況は各家庭の事情によりさまざまです)

 

そのような苦しい現実と向き合わなくてはならない子どもたちの多くは、人と接することを恐れるようになり、大人を信用しなくなり、人生の大切な時期を、辛い思いをして過ごさなくてはならなくなってしまいます。小学生の段階で、「昔に戻りたい」とさえつぶやく子もいます。

スポーツはみんなでやると楽しいということがわかった

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★「スポーツメンタリング」の特徴と目的

・大学生メンターが毎回小学生メンティーの家まで送迎

 スポーツメンタリングの最も大きな特徴は、期間中毎回、メンターがメンティーの自宅または最寄り駅まで迎えに行き、帰りも送り届けることです。会場までの行き帰りを一緒に電車やバスにのって移動するとき、学校で楽しかったことや、好きなテレビ番組の話、残念だったことなども共有することで、絆が深まります。

 

ほとんどすべてのメンターが最もうれしいと感じたこと、それは、メンティーを迎えに行ったとき自分の名前を呼んで駆け寄ってきてくれたこと、また帰りに毎回自分の電車が見えなくなるまでずっと手を振っていてくれたこと、でした。学校の先生が来ても出てこない、ひきこもり状態にあった子も、メンターが迎えに行くと出てきて一緒に外出するようになり、それがその子にとっての唯一の外出機会となった事例もあります。

 

とくに心に傷を負った子どもたちにとっては、誰かが自分を迎えに来てくれて、自分と真剣に向き合ってくれる、ということが、本当にかけがえのない嬉しいできごとで、毎回待ち遠しくてたまらないのです。そして、お忙しいお母さんが送り迎えをする必要もなく、時間を有効にご活用いただくことができます。 

 

・1対1のメンタリングプログラム

スポーツメンタリングでは、ひとりの大学生メンターが期間中ずっと同じひとりの小学生メンティーを担当します。小学生にとって大学生は、大人ほど年は離れていないけれど、けんかするには離れすぎ、という絶妙な距離感にあり、それが「警戒しすぎずなんでも話せる相手」としてとてもよい効果につながっています。

 

一方、大学生にとっても、小学生は普段の大学生活ではほとんど触れ合うことのない相手です。最初はどういう言葉やトーンを使って話したらよいか迷うメンターも多いですが、一生懸命工夫してコミュニケーションを図ろうとすることで、メンターにとても大きな学びの機会となっています。

 

・目的は、子どもらしく友達とスポーツできる環境と信頼できるお兄さん、お姉さんをつくること

プログラム名は「スポーツ」といっていますが、実際には競技スポーツを実施することはほとんどありません。サッカーやバスケットボールなどを活用したワークを実施することはありますが、スポーツのスキルアップを目的としているわけではなく、実際にはビーチボールでドッチボールといった、軽い運動をすることが多いです。

 

実施メニューは毎回メンターが考えますが、運動が得意ではない子も楽しめるよう、また得意なスポーツがあれば他の子に教える機会をつくるなどの工夫をします。始める前には毎回、今週の楽しかったことなどをお互いに共有し、「人前で話す」練習もします。

 

「スポーツ」というと厳しいイメージが強いかもしれませんが、スポーツメンタリングが最も大切にしているのは、実は、”まったり感”です。なぜなら、参加者は、普通の家庭のように、家で”まったり”することができない環境で生活しているからです。全員が集合するときも、ダッシュで集まる必要はありませんし、うまくできなくても、失敗しても叱られることはありません。スポーツメンタリングは、子どもたちにとって「安心して友達と楽しくのびのび体を動かせる場所」であることを心がけ、毎回の活動を実施しています。

 

でも、ルールだけは守り、みんなが楽しむためにどうしたらよいか、という点は重視し、みなで一緒に考えます。それだけで、子どもたちは、お互いから学び、みるみる輝き、元気を取り戻していきます。友達に会った瞬間、ぱっと笑顔になる子も多く、なかには「これまではスポーツが嫌いだったけど、好きになった」という子もいました。

スポーツは人と人をつなぐ大切なものだとわかった

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★「スポーツメンタリング」の効果

 ・小学校高学年というタイミングが重要!

虐待を受けた子どもの脳は「やる気や意欲などに関わる部位の活動が低下」することが研究でわかっていますが、スポーツメンタリングに参加すると、自主的に手を挙げて発言したりする子が増えてきます。まだ小規模の活動で、医学的な根拠はありませんが、結果として起きていることは、「子どもの劇的な変化」です。

 

例えば、開会式の日になって緊張のあまり持病が出て参加できなくなってしまった子や、名前を聞かれても答えられなかった子、またメンターが話しかけないと何も話さなかった子が、友達を思いやることまでできるようになって、学校の先生から「何かあったんですか」と聞かれたという事例もありました。また、顔もやせこけて青白かったのに、終わるころには子どもらしい元気いっぱいのはちきれんばかりの笑顔で卒業していく子もいます。

 

「お母さんだけが世界で唯一話す相手」というような生活をしている子も参加するスポーツメンタリングでは、彼らに差し伸べられる「思いやり」は、砂漠にいる人が水を見つけた時のように、激しい渇望をもって吸収されます。そして彼らはそれを、「心の筋肉」に変え、強く生きていくためのチカラにするのです。

 

30年以上にわたりDV被害者支援をしている専門家によると、そういう経験を小学校高学年でするのが理想的なのだそうです。その効果が最も高く、一度その段階で「心の筋肉」をつけておけば、後で同じようなネガティブな経験をしても、自力で立ち直れるようになる、とのこと。実際、成長しきった中高生やお母さんに同じような効果を期待するのは難しいそうですので、早いうちに、と呼びかけています。

 

・ クリスマスには、サンタさんが!メンターに会えなくてもがんばれる「信じる力」をつける

 

スポーツメンタリングは、11月初めには閉会式を迎えます。実は、小学生メンティーには内緒ですが、閉会式後、クリスマスにサンタさんが各メンティーの家を訪れます。サンタさんは、プレゼントと、それから、メンターからのクリスマスカードを届けるのですが、そこにメンターの姿はありません。

 

スポーツメンタリングでは、閉会式後はメンターとメンティーが定期的に会うことはありません。半年間、ともに過ごして仲良しになったメンターとメンティーにとってこの「別れ」は最も辛いことです。でも、それは同時に、最も重要なことでもあります。人生の「出会いと別れ」を学ぶ大切な機会だからです。

 

「別れを学ぶ」ということ、それは、「ずっとそばにいなくても、自分を応援してくれることを信じてがんばる強さを持ち続ける」、ということです。それこそが、スポーツメンタリングの目標です。 

 

・子どもが変わると、お母さんも変わる

 実は、スポーツメンタリングで変わるのは子どもだけではありません。子どもが変わることで一番嬉しいのはお母さん。お母さんは、開会式と閉会式以外はスポーツメンタリングに参加することはありませんが、そのお母さんにも、スマイルが増え、素敵な変化が起きます。

 

多くのDV被害者家庭のお母さんは、自分がひとりでこの子を守っていかなくては、と気負って生きています。でもスポーツメンタリングを通して、大学生メンティーやスタッフに頼ってもよいこと、そして何より、自分の子どもは、思っていたより頼りがいがあったりすることにも気がつくことができるのです。あるお母さんは、閉会式で「これからはもう少し肩の力を抜いて、もっと前向きに生きていこうと思います」とコメントしてくださいました。

 

子どもに起こる変化を本能的に敏感に感じ取り、そのポジティブな気分もシェアできてしまうのは、「お母さん」の特別な能力なのかもしれません。

 

・大学生メンターにとっても貴重な学びの機会

大学生にとっても、元気で純粋な(そして案外オトナな!?)小学生とのふれあいは、新しい自分を見つめなおしたりコミュニケーションスキルを向上させる機会になります。小学生のシンプルな発言から、就職活動などの迷いを吹っ切れたというメンターもいました。

 

ある教員志望のメンターは、教育実習では多くの生徒をマネジメントする手法を学ぶのに対し、スポーツメンタリングでは、半年間ひとりの小学生と向き合うという、他ではできない貴重な経験ができた、ともコメントしています。

 

社会人を目前に迷うことも多い大学生メンターにとっても、自分の存在をこんなにも喜んでくれる小学生の存在は、大きな励みになっていたようです。

サンタクロースw

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